人生雑論ノート

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フリーゲーム『ナントカ三術将』感想色々 その陸

 こんばんは。

 「三條」様制作フリーゲーム『ナントカ三術将』シリーズ感想、6つ目を書かせていただきます。

 よろしくお願いいたします。

※ネタバレ配慮は一切ございません。プレイ後にお読みください。

※スピンオフ作品『占択◇スクランブル』は未プレイです。

※『ニチジョウ三術将』などの後日談や設定資料集も未読ですのでご了承ください。

 

  では、『ナントカ三術将』シリーズ感想のリンクです。

zaturon.hatenablog.jp

 

 では、よろしくお願いいたします。

 

 今回は「夢幻操士」(以下「夢幻」)及び、魔王様について書かせていただきたいと思っている。

 魔王様は登場早々せっかく考えた直属の精鋭部隊の名前を「ナントカ三術将」というあんまりな略し方をされたというものすごいインパクトであった。私の中では魔王と言えば『ドラクエ3』のゾーマ様や、『ダイの大冒険』のバーン様といった面々が思い浮かぶ。魔王という肩書に私は『ナントカ三術将』の魔王様がどのような方なのかものすごく期待した。結果すごくかわいいと思ってしまった。以後、私の中で「魔王様かわいい」が定着した。ゾーマやらバーンやらは魔王じゃなくて大魔王だろ、というツッコミはなしでお願いします。あと古いというツッコミもなしで。名作やろ!

 だが、このオープニングの時点で「夢幻」はたいして印象には残らなかった。私が「夢幻」を強く意識したのは「無印」ラストバトルである。

「心があるから争う」

 「子供」に対して、「夢幻」は「自分の意志があるからこそ今こうして争っているのではないか」と言い放ったわけだが、この言葉に私はかなり驚いた。まさかこの言葉を迷いもせずに言葉にできるタイプとは思っていなかったのである。私の作中のキャラに対する読み込みが浅いだけであるというツッコミはとりあえず置いておいていただいて、この言葉で私は一気に「夢幻」が好きになった。

 「夢幻」と魔王様の諸々の事情が描かれるのは『ナントカ三術将3』であるが、「夢幻」に関してはそれまでにも色々と伏線は張られていたようである。

 「夢幻」は『ナントカ三術将3』にて「無色の魔力の持ち主」という事実が明らかになるが、空間操作に関しては最初から特に隠すこともなく描写されていた。はっきり言っていろいろと反則ではないかと言いたくなるほど強力な力である。同時に、消耗が激しく使いどころも案外限定されてしまうようなので、一発の威力が大きいものの維持運用がかなり大変な特殊大砲、というイメージが自分の中でできた。実際、『ナントカ三術将3』のラストバトル時は魔力切れを起こしてラスボスにとどめはさせなかった。また、本人が「使いどころがむつかしい」ということも言っている。

 汎用性においては「彩喚士」の彩喚術が一番であるのは恐らく作中で示されており、魔晶石さえあれば術を行使できるが、かなり高度な計算が必要になると明示されている。「夢幻」の空間操作とはかなり対照的な印象を受ける。

 『ナントカ三術将2』のラストバトルにて、「夢幻」は空間操作の奥の手を使った。その際、「自分が今どうしているか分からないだろう」と相手に言い放った。右も左も、上も下も分からない。「自分も以前はそうだった」とも。

 空間操作はとてつもなく危険な力なのだということが、この言葉で思い浮かんだ。普段私たちは上下左右など意識する必要もなく、安定して暮らしている。それが当たり前で当然で、常識である。重力などというモノが発見されたのはごく最近だといって過言ではない。そして発見されたからといって、私たちの認識、感覚そのものは変わりようがない。「右ってどっちだっけ?」というのは単純にその言葉が示す方向の位置関係を記憶していないだけであり、自分から見て一定方向が必ず「右」であるという前提がなければ成立しない。歩いているときにいきなり上下が入れ替わる、などという心配をする必要は、私たちは基本的にない。

 「夢幻」はその前提そのものを崩すことができるし、「自分もそうだった」という言葉から考えると、私たちの常識が通じない状況の中にいた、ということになる。

 人間の無意識、記憶、常識や認識は、たとえ暗闇の中であろうとも、そこが慣れた我が家の階段であるなら普段通りに上り下りすることも可能にする。階段がある、それはいきなりなくなったりしない、いつも通りにそこに在る、ということを私たちは疑わない。無論、普段ない物が置いてあるかもしれないし、穴が開いているかもしれない。だが、それでも私たちは「普段通りの階段」を想定する。いつ階段に穴が開くか、目の前の道が陥没するかなど、考えていたら生きていくことすらままならない。まさに杞憂である。

 その常識が一切通じない場所に放り込まれたら、ものの数分で発狂してもおかしくないのではないかと感じる。そんなところに「以前いた」らしい「夢幻」だが、これは「無色の魔力」を持つもの全員が通る道なのか否かは不明である。

 さて、話は変わるが「普通の手段では決して倒せない相手」を倒すことができる強力無比の力を保有する「魔王」という存在は崇拝されているらしい。作中での描写を見る限り、扱いは完全に「神」である。同時に、「魔王」としての基盤が盤石ではない魔王様は、新聞において批判されたりなどあまり敬われていないような描写も多々ある。この差は興味深い。

 現在の「魔王」は作中の魔王様であるが、彼の力は空間操作ではなく「青色」である。「魔王」にふさわしい強力な力であることは確かだが、歴代の魔王が必ず持っていた「無色の魔力」を持ってはいない。興味深い話として、魔王の血筋は必ず一人しか生まれず、また男であったらしい。しかし今代においては子は二人生まれ、「無色の魔力」を有するのは女である。今までの力の継承及び今代における変化にどのような意味があるのかないのかは分からないが、一つ言えることはあるかもしれない。

 「無色の魔力」は無敵ではない、ということである。

 先代魔王は暗殺された。空間を操作できる存在であろうとも暗殺されうるのである。「夢幻」を見ている限りでは「強力無比だが使い勝手はかなり悪い」ということは言えると考える。

 正直な話、空間そのものを操作する相手を暗殺できる暗殺者が一番恐ろしいと思うのだが、根本的に何者なのかが一切わかっていないあたりにさらに恐怖を感じる。敵対している相手側の暗殺者ではと魔王様は考えているようだが、特に根拠が語られていない。味方の裏切りの可能性もあるし、『ナントカ三術将3』のラスボスあたりが何かした可能性も一応はある。

 空間操作は強力だが扱いがむつかしいうえ、結局担い手が「心あるもの」であるから隙も生じやすい。その隙をうまくついた、というか、つこうとしたのが『ナントカ三術将3』のラスボスだろう。彼が一番恐れる必要があったのが、少なくとも彼の思考においては「空間操作」だった。それ以外はどうとでもなると踏んで、自らの安全を相手の心を揺さぶることで確保しようとした。つまり、彼は自分の経験からそれが可能であるという結論を出したのだろう。おそらくそれはある意味正解だったと思われる。

 今代の特殊な状況だからこそできると踏んだ可能性もあるが、むしろ、だからこそ彼の目論見は失敗に終わったのかもしれない。

 「夢幻」は特殊な事情ゆえに長く封印されていて、記憶がない。そして封印されている間に周りはどんどん変化していって、封印された時からあまりにも変わりすぎていた。記憶がないために自分だけの空間で過ごし、その中に他人を入れるのを拒む。

 自分という軸がはっきりしない状況で、自分の領域として定めた場所に他人をいれたがらない、というのは理解できる行動である。しかし、『ナントカ三術将2』のラストバトルにおいて同じ三術将の二人をとっさに自分の空間にいれることができたのは、今まで過ごした時間によると思われる。信頼といえばそうかもしれないが、あるいは「根本的に自分とは違う」ということがはっきりしている、ということもあるかもしれない。「夢幻」は「彩喚士」に対してその言動に苦言を呈し、怒りもあらわにしている。「守影術士」(以下「守影」)に対しても「彩喚士」に対するほど感情が高ぶっていないが、興味を示し会話も行っている。

 記憶がない状態であり、自分が何者かの土台が一切ない中、「夢幻」は現在あるもので自分を構成していく必要がある。「ナントカ三術将」という地位、そして同僚という存在は、「夢幻」という存在を定義する一つの重要な要素となったはずだと考える。

 魔王様は「夢幻」のために「ナントカ三術将」という存在を作ったそうなので、「夢幻」にとって良い状態になるように、悪くならないように配慮した人選だったはずである。実際、空間操作の汎用性の低さをカバーできる「彩喚士」と、防御においては最も強力な術士である「守影」という布陣である。このシスコンめ。

 魔王様は「無色の魔力」の持ち主があっさりと殺されうるという事実をイヤというほど認識してしまっている。故に万全の態勢を整える必要もあったというのはうなずける。魔王の座は「無色の魔力」の持ち主である「夢幻」に返すつもりであったらしいので、「夢幻」を守りつつ、自らは魔王として失策を行うわけにはいかないというプレッシャーと日々戦っていたことだろう。

 そんな魔王様、色占いにおいては「大雑把」ということになるらしい。へえ、大雑把ねえ……。かわいい魔王様好きの私大歓喜

 とはいえ、色占いはまんま血液型占いであり、俗に言う血液型による性格診断は数十年前に研究されつくしたうえで否定されているらしいので、信憑性がどの程度なのかは不明である。少なくともA型、B型という血液の方においては否定されているそうである。だが、血液のほかの型に関してはどうなのかは一切知らないので、そちらでなら関連があるかもしれない。参考までに私個人に関しては、血液型による性格診断の考え方において、血液型を当てられたことが一度もないことを明記しておく。あと色占いの考え方だと、結局「夢幻」の性格が分からないことになる。

 ともあれ、記憶がない「夢幻」にとっては魔王様の努力と苦労は分かりようもなく、自分という存在の土台を必死に探し回っていたことになる。そんな中「三術将」の二人は、あるいは魔王様の期待をはるかに超えた成果を出したといえる。「彩喚士」は「自分が彼女を守らないと!」と暴走してしまう程度には「夢幻」を気にかけるようになったし、「守影」も恩人である魔王様に報いるほか、仲間のためにも奔走した。お互いの意思を通すために仲間割れを起こして全力でぶつかり合えるほどの関係はそうそう得られるものではないと個人的には考えているので、これほどに互いをむき出しにしたうえで全力で戦うような仲間を得た事実は、確実に「夢幻」に精神的な安定をもたらしたと考えている。

 彼女が魔王様と真剣に向き合えるようになったのは「三術将」の二人がいたからであるのは明らかだろう。自分の過去など一切知らない、あるいは関りがない存在であるからこそ、安心して打ち解けることができたのかもしれない。

 恐らくこれから先のこの兄弟の最大の試練は、「夢幻」の結婚相手というか、恋人だと思われる。「夢幻」に懸想しているという事実だけで恐らく魔王様に氷漬けにされること請け合いなので、下手に恋愛もできないと思われる。魔王様が納得する男性などそれこそ「三術将」の二人や魔王軍や文官の中でも魔王様が信頼する一部、程度だろう。

 ……個人的に一番色々と相性がいいと考えるのが「彩喚士」なのだが、ぶっちゃけ前科持ちというか、誰かにバレた時点で全部終わることをやらかしているため、お勧めできなかったりもする。魔王様直属の部下をやっている時点で、下手したら「魔王様の指示」と言われかねないうえ、そうでなくても任命責任をきつく問われかねない状況だったりもする。

 都の新聞などが平然と現魔王批判を書いても何も罰せられない、つまり絶対王政ではないようなので、かなり命とりではないだろうか。魔王様も自分はまだ認められておらず、地盤を盤石にする必要があると自覚していた。そういう観点からすると「彩喚士」だけでなく、兄弟が町をいくつも滅ぼしていた「守影」もまた火種であり、魔王様の政治手腕がかなり問われる事態である。

 かなりいばらの道なのだが、二人にはぜひ頑張っていただきたい。

 

 というわけで、今回はここで終わります。

 お疲れ様でした~。

 

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